ちとここ数日体調不良ですっかり亀更新でした。
買ったのはもう随分前なんですが、夏からずっとバタバタしてたので途中までしか読めず、ちゃんと最後まで読み終わったのが先々週末。ようやく感想が書けます…(笑)。
試し読みで冒頭読んだだけで「だめだこりゃ買うしかない」とポチった一冊。
何がすごいと言って、400頁越えのボリュームなんですが、もう最初から最後まで左之さん出っぱなし!(笑)
いや、そりゃ左之さんが主人公の本なんで当然なんですが
こんなにスポットライト当たってる本なかなかないので…超嬉しい。
薄桜鬼のゲームの方には確かちょっとありましたよね、左之さんの若かりしやんちゃ時代の話。
あの若いイケメン左之さんにハァハァしたのは言うまでもないんですがあれじゃ足りない。
いやむしろ飢えるばかり。
カッとなって切腹したけど一命をとりとめた…なんてもうそれだけで既に波乱万丈すぎるwww
その激しすぎる過去や、どうやってあの人格が形成されるに至ったのか、そこが知りたい。
すごーく知りたい。
で、足りない原田話(と原沖)を求めて時代小説を色々読んではみたものの、
試衛館に来るまでの左之さんの過去話は見つからず…。
それがこの本にはふんだんに出てきます。
(※私には史実に忠実かどうかより登場人物が生き生きと描かれているかどうかの方が重要事項なので無問題だけど、フィクションが多く含まれて史実と異なる話はやだ…という方には向かないと思う。小説なので)
伊予松山藩の中でも貧しく最も身分の低い家に生まれ育ったものの、卑屈にはならずたくましく成長してゆく姿や、規律違反をして厳しく折檻されても平気でそのまま寝てしまう豪胆さ(※裸にされて水責め中に寝る左之さん。ただもんじゃない)、面倒見がよくて誰からも慕われるエピソードとか。
そうそう、そういう話を求めてたんだよ~嬉しいな♪
その他、独楽回しが非常に上手だった、とか、飛び道具(石とかつぶてとか)を敵に命中させる練習もひそかに重ねていて相当の腕前だった、とかいう設定も楽しい。
どこの道場にも行けなかった若い頃、武道の腕を磨くために山でひとり黙々と槍の稽古をし続けた姿とか痺れる。
少年時代のエピソードの数々が、他の試衛館メンバーの過去話とはケタ違いの貧しさです。
身分が低く貧乏であったため、腕を磨く機会を得るためにも苦労をしている記述が随所に出てきます。
・ドン底級の貧乏のため、両親は不仲。しかし母親は美人で賢い人だった。左之さんは母親似。
・武士の中でも最下級の身分だったため、剣の腕なんか磨かなくてもいいとされ、道場にも通えなかった。
なので腕を磨くため、山でひとり黙々と槍の稽古をした。
・道場に通ったり必要なものを買ったりするために、せっせと草鞋を作り、それを売って小銭を稼いだ。
(草鞋作りに関してはプロ級設定)
・登城する日には一本だけ刀をさすことを許されたので嬉しかった。
(二本ざしが認められなかったほど身分が低かった…という事らしい)
伊予松山藩のとある武家屋敷に仕える事となった左之さんは、大坂で働く機会を得ます。
大坂でぜひ一層の武道の稽古に励みたい、との訴えが聞き届けられ、働くかたわら道場で腕を磨く事を許されます。(すでにかなり腕が立つと認識されていた)
で、大坂で鍛錬に励む日々。(谷道場で学んだのもこの頃)
しかしある日飲んで眠りこけ、うっかり無断で門限破りをしてしまう羽目に。
(門限やぶりは大罪だったので、しかたなくこの時脱藩を決意)
なんか股間をもみもみされている夢をみてふと目覚めたら、
女の人にほんとにモミモミされていたというw
で、行くあてに困っていた頃に、試衛館に食客として転がり込むことになったと。
原沖的にもほっこりできるシーンが多々。
二人で飲みに行くシーンわりとあるんですよね。
好きな子は遠くから見てるだけでいい……って感じの総司の草食系発言を聞いて
いやいや…もっとガツガツいこうぜ…とハッパかけてたり。
総司を元気づけるためにぼたん鍋でも食べに行こう、と誘ったり。
子供たちと遊ぶ時に得意の独楽を持ち出したら、
子供が好きなんですね~と総司に感心されたり。
原沖に飢えまくっているので、そういう何気ない会話のひとつひとつが貴重で嬉しい…。
そのほかこの本の左之さんの特筆すべき点
・新選組に入ってから政治のお勉強もしてすっかり弁も立つようになってる、という点。
理詰めで近藤さんを言い負かすような一面もあり、
近藤さん、土方さんには確かにその腕を買われてはいたが、存在自体は煙たがられていた感じ。
・超イケメン設定なので、女性からアプローチされまくり。おまささんも一目ぼれで猛アタック。
自分から積極的に女性を落としにいくタイプとしては描かれていない。
・子供時代の極貧生活のせいか貧乏嫌い。妻子想い。
・可愛がっていた隊士の楠がスパイだったと知り、田んぼに追い詰めて切り捨てるシーンも、
他の本に書かれているように、カッとなって切った…のではなく、
捕まって拷問される事を恐れた楠がひとおもいに殺してくれと頼む展開になっており、
情のある人として描かれている。
そのため、拷問で楠から情報を引き出せなかった事をあとで近藤からひどく咎められる。
・内部抗争と粛清を繰り返す新選組を苦々しい気持ちで眺めているうち、次第に心が離れてゆく。
・竜馬暗殺の濡れ衣をきせられた…という有名なエピソードは、かなり異なる方向に展開。
・伊予での少年時代を共にすごした一番仲の良かった友人と、思わぬ形で再会。
永倉本読んだ時も思ったんですが、特別永倉さんと仲良かった、といった感じじゃなかったかな…。
総司との会話が多く、総司と仲良し設定…という感じかな♪
文章はややかため。永倉本ほどの読みにくさではないですが、
かたい文体の上にページ数が非常に多いため、
原田愛がなければ読みすすむのがしんどくなるかもしれません。
特に後半は「負け戦を重ね、あとはもう落ちてゆくばかり」…の重い展開ですからね…。
オススメ度は…
個人的にはタイトルだけでもう★5をあげたい気分ですが
分厚い本なので、原田ファンじゃなければちょいキツイかも…。
ややかたい文体なうえに、ページ数も膨大。
小説…というより原田半生記…といった感じの内容なので、
薄桜鬼ファン的には★3ぐらい。新選組より前の話が多いため、原田ファンじゃなければ前半しんどいかと。
過去エピソードに飢えている原田ファンの方になら★5でオススメ。
原沖的にも★5をあげたい…
(そんな原沖っぽいわけじゃないんだけど、ほかにあんまり原沖っぽい本ないというのもある)
原田スキーの方にならオススメできる一冊。一読の価値はあります。
でも左之さんにさほど興味がない方にはあえてオススメはしません。