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「水槽の中のジョミ・観察日誌 21」 ~僕の誕生日 後編

「マ、マードックさん…あのっ…こ、こんな高価なも…」
「グレイブでいいよ、キース君。こういうおめでたい日に君みたいな子供が遠慮なんてするもんじゃないっ! はっはっは」

マードック氏の豪快な声に、僕の声はかき消された。

「いや…君がよくペットショップの水槽の前でこの生き物を眺めていると聞いてね。」


(それで300万円のコレをポンと買った…っていうのか?)

「ところがその魚、見た目と違って実は意外と年とってるらしい。エサをのどに詰まらせて死にかけたことがある」

「えええっ?!」

年とってるって…?

「いやいや、もう大丈夫。しかし…獣医が駆けつけるまでは大騒ぎだったよ。飼育担当の者たちが死んだ死んだと大慌てで知らせに来て…」

飼育担当の者たちって…複数いるわけか…なんか、すごいな…。
すごいけど、それにあんまり驚かなくなった自分もすごい…。

「逆さまにして思い切りこう、振ったら息を吹き返してくれて良かったが…あの時は慌てたな。だから、のどに詰まりそうなエサは与えてはいけないよ。その点だけ特に気をつけてくれたまえ」

「……え?…爺さん?……まさかこれ、オス、なんですか?」

「知らなかったのかい?…私は店の主人からそう聞いたんだが」

「……そう、なんですか…」

ジョミがそれを知ったら何て言うかな。
それとも、あいつ、わかってたのかな…。
僕は金魚鉢の底で眠る生き物を見つめてうつむいた。

爺さん…ってことは、この人面魚、もうあまり長く生きられないかもしれないな…。
だったらやっぱり今すぐ家に連れて帰りたい。でも…

「母さん、これ、いくらするのか知ってる?……こんなの……今日会ったばかりの人から、ポンと簡単に受け取れないよ…」

「キース…」

母さんとマードック氏の表情が曇る。僕は顔を上げてマードック氏の顔をまっすぐ見た。

「今は無理だけど、大人になったら働いて…必ずお金を払います。だから…プレゼントじゃなくて、これを…僕に売ってほしいんです」

「……売る? つまり、私からのプレゼントとしては受け取ることができない…、そういうことかね?」

マードック氏の眼鏡の奥の目がキラリと鋭く光り、その場の空気が一気に五度ぐらい冷え込んだ気がした。背中がゾクっとしたけど、僕は目をそらさず、はい、と答えた。
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「残念だが、君のような子供に売る、なんてことはできないな。」

それまでとは違った低く感情の伴わない男の声に、うろたえた母さんの顔が視界に入る。
やっぱり僕はこの人の機嫌を損ねてしまった…のかな…。
テーブルの下で両方の拳をぎゅっと握り締めた。

ごめんな、ジョミ。

でもこんな高価なものをもらって…このままズルズルこの人のペースに巻き込まれてしまうのは、どうしてもイヤだったんだ。
母さんは…ほんともっと早く父さんと別れたかっただろうに、僕なんかに気をつかったから長いこと苦労した。今幸せそうに笑ってても、これがずっと続く保障なんて、どこにもない。

だから、やっぱり、もらえない…。ジョミ、ごめん、ほんとにごめん。

「売ることはできない。だが……こういうのはどうだろう、キース君。この魚を君に預けて世話をしてもらう、っていうのは…」
「えっ…」
マードック氏が突然何を言い出したのか咄嗟に理解できず、ポカンと口が開いた。

「すでに君は同じような魚を飼ってるそうじゃないか。世話の仕方もうちの世話係たちよりはずっと頼りになりそうだ。…どうだろう、そんな君を見込んで、これの世話をぜひ頼みたいんだが。…引き受けてはくれないか?」

そう言うとマードック氏はニッと白い歯を見せて笑った。
ああ……そういうことか。
不覚にも鼻の奥がツンとした。

「……はい…よろこんで!」

母さんがほうっと溜息をついて、よかった…と呟くと、マードック氏は母さんの手を取り興奮した口調でいきなりべらべらとまくし立てた。
「ああ…ミシェル!…キース君は本当にしっかりしたいい息子さんだねえ~!うん、やはり心優しい君の遺伝子を継いでいるせいか……いや、違うなミシェル、君の育て方が素晴らしかったんだね!さすがだ…!私は非常に嬉しいよ…感動した。キース君、あらためて言わせてもらおう、誕生日おめでとう!」

ミシェルミシェルと聞いてるこっちが恥ずかしかったが、僕はマードック氏に素直に『ありがとうございます』と頭を下げた。
心から。

帰りの車中、しっかりと密封された金魚鉢を抱きながら、母さんと楽しそうに話す男の横顔をチラリと見る。

グレイブ・マードック…
確かに鼻持ちならない所もあるし、金銭感覚とか全然ついてけないけど…
母さんのことが本当に好きなんだろうな…ってのは、側で見ててよくわかった。

そんな悪い人じゃ…ない…と思う。

応援してやっても、いいかな…。



その夜はすっかり帰宅するのが遅くなってしまい、
ワクワクしながら部屋に戻ってみると、ジョミは水槽の中で待ちくたびれたのかすでに眠ってしまっていた。

明日目が覚めたらビックリするだろうな…。
僕は金魚鉢をジョミの水槽の横に置き、すやすやと気持ちよさそうに眠る二匹を交互に眺めた。
ジョミの驚いたり喜んだりする表情を思い浮かべると、自然と頬が緩む。

僕はこれ以上ないぐらい幸せな気分でベッドにもぐりこみ、そのあと…疲れていたのかあっという間に眠りについた。




ようやくブルーがジョミのもとへ♪

あ、ロッピーで予約してたポニョの貴重品入れがようやく私の手元に♪(笑)
ラブリーです。

あ、そうそう、あまりに嬉しすぎて銀行で古い貴重品入れをATMの横に忘れてしまいました(あほすぎる)。
もちろん10分ぐらいで思い出して銀行にとりに行ったんですが…すでに忘れ物として無事届けられ、支店長の手に渡って中身をあらためられておりました…

もーまっつぁおになりましたー…そこの銀行とゆうちょの通帳のほかに、シティの申込み時に入金した時の控えが何枚も…さらに恐ろしいのが9月のシールラリーで作ったジョミブルシールの残りとか(捨てろよ…しかもサークル名とか書いてるしっ、うわー!)、コミケから届いた連絡ハガキとか…竹宮先生の個展のご案内ハガキとか(なぜそんなものを持ち歩くっ?!)…委託本の売上控えとか…その……
あまりにオタク色強すぎる怪しい中身で…

「こちらでよろしいでしょうか?」
…と、目の前にばばんと広げられた日にゃもう、恥ずかしさで顔から火が出そうでした。

あああううう…いろいろきちんと処分しておかねばうっかり死ねない…とつくづく思いました。
ほんまにドキドキした…あああ。あそこの銀行もう行きたくない…(しかし我が家のメインバンク)

みなさんも落し物には気をつけてね~♪
あ!いつも拍手ありがとうございます!
新春漫画や拍手小話にコメントいただけてすごく嬉しかったです♪

なんというか…文字書きの能力皆無なのに最近やたら文字率高くてすみません…。
漫画にしてるヒマがもうないんで…苦肉の策です…。
とてもじゃないけどSSとかいうレベルではない駄文ばっかりで誠にすみませんが
「あっ、この人は文章も漫画もヘタなのね…」とご理解いただいた上でさくっとスルーしてやってください。
じゃあ何が得意分野やねんお前…と聞かれると…

やっぱ…「絡み絵」でしょうかね…。(普通の絵じゃないのか…orz)

ベッドでまぐわうジョミーとブルーを描いてる時が一番自分いきいきしてる気がします(遠い目)…
大阪インテに行かれる方はぜひ新刊立ち読みして「あーなるほど」と笑ってやってください。

ようやくユリ様にお渡しする分を製本しました…(おっそー…)。
当初冬コミで販売する予定だった数、ようやく全部完成した計算になります…。
遅くてすみません。

インテ委託販売用は無事大阪に着いたとご連絡いただきました。良かった…。
そちらもどうぞ宜しくお願いします。

お返事はまたあらためて♪

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同性愛的表現に嫌悪感を感じられる方にとっては目に毒なモノしか置いていませんので、ご興味ない方もお戻りになって下さい。

【プロフィール】
隠れ腐女子で隠れ絵描き。アルビノスキー。
耽美系美少年の絡み絵を描くことが生きがい。

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