「水槽の中のジョミ・観察日誌」38
4月30日 (木曜日) 雨
昨日の休日は雨だった。
サムとシロエがゲーム機を持って昼過ぎから家に遊びに来ていた。
ところが夕方になると、いきなりグレイブ氏がやってきた。
どうやら母さんが自分の手料理を振舞おうと夕食に招いたらしい。
二人のジュースがなくなったので台所に取りに行ったら、グレイブ氏と鉢合わせ。
「やあ、キースくん、いきなり押しかけてしまって、すまないねぇ。 ぜひとも今夜はミシェルの手料理を食べさせてもらおうと思ってね~ははははは」
ははは…じゃないだろ。
チラチラとエプロン姿の母さんを目の端で追いかけては、鼻の下を伸ばしている。
僕に挨拶しつつも全然眼中にないって感じだ。
……まあ別にいいけど。
ただ僕を巻き込まずに、二人で勝手にやっててくれないかな…。
そのほうがこっちとしてはラクなんだけど…。
「キースくん、このゴールデンウィークの予定は?」
「…特に、ないです」
「それは良かった。 ミシェルとうちの別荘に遊びに来ないか? 軽井沢にあるんだが」
「え………っ」
いや~~~~…それは…
だって僕が行ったらアツアツな二人の邪魔なだけだろ…?
家でゆっくりしたいんで…と断りかけたその時、サムとシロエがドアの隙間からこっちをポカンと見ている事に気付いた。いつからそこにいたんだ、お前ら。
さては聞いてたのか?
二人に気付いたグレイブ氏は、いきなり彼らに満面の笑顔を向けてこう言った。
「そうだ!よかったら君達も一緒に遊びに来ないかい? キースくんも友達と一緒の方が楽しいだろうし!」
えええ??
「ウソー!別荘ー?!軽井沢~?!うっわ~…いいなー。でも、ほんとに僕なんかがお邪魔してもいいんですかぁ~?!」
シロエが目をキラキラさせている。
(ちょっと待て!)
「もちろんだとも。キースくんの友人なら大歓迎さ。あ、肉がキライじゃなければ、バーベキューなんてどうだろう?」
「肉、だ、大好きです!!」
頬を紅潮させたサムが身を乗り出して即答した。
「じゃ、決まりだ!」
あああ……
というわけで今年のGWはとんでもないことに
グレイブ氏の軽井沢の別荘で過ごすことになってしまった…。
さらにその後、なんとなくなりゆきで、シロエとサムも夕食を一緒に食べていくことになった。
シロエはなぜだかよくわからないが、大人には受けがいい。
物怖じせずグレイブ氏と喋っている。
サムは仏頂面の僕と違っていつもニコニコしてるので、そこにいるだけで場がなんとなくなごむ。
シロエがペラペラと学校の事とかをよく喋ってくれるので、僕が特に口を開く必要はなかった。
グレイブ氏と母さんと僕の三人で食卓を囲むより、気を遣わなくてすんだかもしれない。
よく喋るシロエとガツガツおかわりするサムを横目で見ながら、僕は内心ちょっとホッとしていた。
シロエとサム、グレイブ氏が帰ったあと、部屋に戻って水槽を覗いたら、
ブルーがコロンと転がって寝ているだけで、じょみの姿が見当たらない。
(……じょみ?)
返事が無い。
じょみは砂利や水草に紛れるような色の人面魚じゃない。
だから見当たらない…なんてことは普通考えられない。
僕はあちらこちらから水槽を覗きこみ、前にじょみが掘っていたくぼみに怪しげな苔?が盛り上がっているのに気付いた。
なんだこれは…。
朝起きてからバタバタしてて今日はあまり水槽を覗いてなかったから、
今やっと気付いたけど……じょみがこしらえたモノなんだろうか?
巣…なのか? いや、でも魚だしな…あいつ。
とりあえず怪しい苔マット?は時々もこもこ動いていたので、
多分中に隠れているんだろう。
またしばらく黙って様子を見るか…。
昨日の休日は雨だった。
サムとシロエがゲーム機を持って昼過ぎから家に遊びに来ていた。
ところが夕方になると、いきなりグレイブ氏がやってきた。
どうやら母さんが自分の手料理を振舞おうと夕食に招いたらしい。
二人のジュースがなくなったので台所に取りに行ったら、グレイブ氏と鉢合わせ。
「やあ、キースくん、いきなり押しかけてしまって、すまないねぇ。 ぜひとも今夜はミシェルの手料理を食べさせてもらおうと思ってね~ははははは」
ははは…じゃないだろ。
チラチラとエプロン姿の母さんを目の端で追いかけては、鼻の下を伸ばしている。
僕に挨拶しつつも全然眼中にないって感じだ。
……まあ別にいいけど。
ただ僕を巻き込まずに、二人で勝手にやっててくれないかな…。
そのほうがこっちとしてはラクなんだけど…。
「キースくん、このゴールデンウィークの予定は?」
「…特に、ないです」
「それは良かった。 ミシェルとうちの別荘に遊びに来ないか? 軽井沢にあるんだが」
「え………っ」
いや~~~~…それは…
だって僕が行ったらアツアツな二人の邪魔なだけだろ…?
家でゆっくりしたいんで…と断りかけたその時、サムとシロエがドアの隙間からこっちをポカンと見ている事に気付いた。いつからそこにいたんだ、お前ら。
さては聞いてたのか?
二人に気付いたグレイブ氏は、いきなり彼らに満面の笑顔を向けてこう言った。
「そうだ!よかったら君達も一緒に遊びに来ないかい? キースくんも友達と一緒の方が楽しいだろうし!」
えええ??
「ウソー!別荘ー?!軽井沢~?!うっわ~…いいなー。でも、ほんとに僕なんかがお邪魔してもいいんですかぁ~?!」
シロエが目をキラキラさせている。
(ちょっと待て!)
「もちろんだとも。キースくんの友人なら大歓迎さ。あ、肉がキライじゃなければ、バーベキューなんてどうだろう?」
「肉、だ、大好きです!!」
頬を紅潮させたサムが身を乗り出して即答した。
「じゃ、決まりだ!」
あああ……
というわけで今年のGWはとんでもないことに
グレイブ氏の軽井沢の別荘で過ごすことになってしまった…。
さらにその後、なんとなくなりゆきで、シロエとサムも夕食を一緒に食べていくことになった。
シロエはなぜだかよくわからないが、大人には受けがいい。
物怖じせずグレイブ氏と喋っている。
サムは仏頂面の僕と違っていつもニコニコしてるので、そこにいるだけで場がなんとなくなごむ。
シロエがペラペラと学校の事とかをよく喋ってくれるので、僕が特に口を開く必要はなかった。
グレイブ氏と母さんと僕の三人で食卓を囲むより、気を遣わなくてすんだかもしれない。
よく喋るシロエとガツガツおかわりするサムを横目で見ながら、僕は内心ちょっとホッとしていた。
シロエとサム、グレイブ氏が帰ったあと、部屋に戻って水槽を覗いたら、
ブルーがコロンと転がって寝ているだけで、じょみの姿が見当たらない。
(……じょみ?)
返事が無い。
じょみは砂利や水草に紛れるような色の人面魚じゃない。
だから見当たらない…なんてことは普通考えられない。
僕はあちらこちらから水槽を覗きこみ、前にじょみが掘っていたくぼみに怪しげな苔?が盛り上がっているのに気付いた。
なんだこれは…。
朝起きてからバタバタしてて今日はあまり水槽を覗いてなかったから、
今やっと気付いたけど……じょみがこしらえたモノなんだろうか?
巣…なのか? いや、でも魚だしな…あいつ。
とりあえず怪しい苔マット?は時々もこもこ動いていたので、
多分中に隠れているんだろう。
またしばらく黙って様子を見るか…。